新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

放送法行政文書事件の背景(前編)

 安倍元総理が凶弾に倒れて以降、いろいろなことが噴き出してきている。今は総務省のリークだろう、放送法についての行政文書が明るみに出て、当時の高市総務大臣や磯崎首相補佐官への非難が高まっている。その関連で2冊の書籍を見つけることができたので、今日明日で紹介したい。

 

 2016年発表の本書は、メディア政策が専門の立教大学砂川浩慶教授の著作。安倍官邸は様々な手法を駆使して、メディアの中でも特にテレビ局を揺さぶっているという。その理由は、安倍元総理が衆議院議員に初当選した1993年の総選挙では、田原総一朗氏に宮沢総理が「政治とカネ」問題で追及された映像が繰り返し放映されたことから、自民党が政権を失ったこと。テレビの怖さを知っている彼は第一次政権でも菅総務大臣放送法を改正して制御下に置こうとした。

 

        

 

 その後再び(野党から)政権に返り咲いた安倍官邸は、テレビ局に圧力をかける。2014年の総選挙にあたって、自民党NHKと民放5社に対し「選挙時期における報道の公平中立」を求める文書(荻生田筆頭副幹事長名義)を出した。1993年のような偏向報道で選挙結果を歪められたくないとの思いらしいが、結果として選挙期間の政治報道は小泉郵政選挙の1/5にまで落ち込んでしまった。

 

 NHK会長人事への介入の他にも、2016年の番組改編では、3人の有名キャスター(テレ朝古館一郎、TBS岸井成格NHK国谷裕子各氏)を降板させる圧力があったという。自民党勉強会では、

 

・沖縄の2紙はつぶせ

経団連に働きかけて広告を出稿させるな

 

 などの意見も出ている。そして2016年には高市総務大臣の「政治的公平を定めた放送法4条に違反した場合は停波もありうる」との発言に繋がっていく。

 

 そもそも政治を監視するのがメディアの役割で、先進各国は独立機関でメディアを監視するのが普通。その普通がまかり通らず、政治がメディアを監視できるのが日本だとある。

 

<続く>