新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

Globalization と Mondialisation

 2020年発表の本書は、知の巨人エマニュエル・トッド教授の近著。「シャルリとは誰か?」でフランスの危機に警鐘を鳴らした筆者が、先進国における民主主義の危機を取り上げた著だ。もともとグローバル化(Globalization)には反対の立場で、ヒトが自由往来する世界化(Mondialisation)はいいけれど、カネやモノの自由流通が加わるグローバル化は良くないという人。

 

 民主主義は「どんな人も自由・平等」で、フランス革命は知性が無くて権威だけの貴族を、知性のある庶民が(知性のない庶民を率いて)倒してこれを獲得した。しかしこれに能力主義が加わると、新しい階級社会ができてしまう。

 

 先進各国では、能力主義による階層が教育の不平等という形で現れ、階層を固定化させる。学力の低い子弟でも、カネで高等教育が受けられるからだ。各国で高等教育への進学率が30%を越え、彼らがエリートとして庶民を見下す。

 

        

 

 これに反発した庶民が、叛旗を翻しているのが各国のストライキや「黄色いベスト運動」。一方ポピュリストも決して増えてはいなくて、フランスでは、

 

マクロン支持層 25%

・ルペン支持層 20%

 

 は変化がない。55%の大衆はどちらも嫌いというわけ。カネやモノの自由流通が弊害なのは、庶民の生活を壊すから。特に若い人が失業し、貧困にあえぎ、家庭を持てないでいる。だから保護主義が台頭してトランプ大統領が誕生したりする。

 

 では日本はどうかというと「エリートたちが他国ほど傲慢でないので大衆が怒らない。だからポピュリスト政党も出てこない」という。日本国内では格差の固定化(や政治家の世襲)が問題になっているが、フランスからはそうは見えないようだ。

 

 本書の結論は、教育改革です。全ての市民に平等な学ぶ機会をという主張には賛同できますが、能力に関わらず平等というのには(僕は)違和感があります。