2021年発表の本書は、ジャーナリスト門田隆将氏の政治書。雑誌「Will」に2014~21年にかけて連載されてきた記事を中心に再構成したもの。著者については今年初めて読んだ「正論」等によく名前の出てくる人だが、著書を読むのは初めて。読んでみると、
勇気は出るけど、蛮勇かも - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
「言論TV」の内容を集大成して - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
の記事を上回る、中国・左派メディア・立憲民主党などの野党・財務省や厚労省など官僚に加えて、米国バイデン政権を斬りまくる内容となっていた。昨日紹介した「大分断」で欧米の新しい階級を勉強したので、日本はどうかと読み始めたのだが、正直トッド先生のレベルには遠く及ばない論説と言える。
冒頭トランプ政権擁護の記事があって、
・大統領選挙は盗まれた
・議会乱入にトランプ氏は責任なし
と「Qアノン」並みの陰謀論が展開されてびっくりした。
まず中国(や北朝鮮など)は、日本の技術を盗み、富を搾取し、領土を狙う敵国扱い。ある程度は真実である。次に左派メディア、特に朝日新聞批判が多い。「角度をつける」のが社是で、偏向報道するのが当たり前とある。そして立憲民主党など左派野党、些細な政権の瑕疵を針小棒大に言い国会を空虚なものにしたという。最後に法曹界も含めた官僚、省益あって国益なしの組織で、安倍官邸を困らせ続けるとある。いくつかはうなずける評論もあるのだが、全体としては首をかしげざるを得ない。
期待した階級闘争論は、既存メディアも含めてSNS等で拡散される(偽)情報によって、些細な差異が拡大して格差となっていくことを指しているようです。いじめやLGBTQ問題などを論じていて、いつの間にか国家転覆の陰謀にまでつながるロジックです。うーん、ちょっと賛同できませんね。