新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

新聞・TV・Web言論の歴史

 2020年発表の本書は、憲政史学者倉山満氏の政治言論の戦後史。筆者は、ネット上の<チャンネルくらら>などを通じて保守政策論を発信している。しかし本当の保守論者は近年ほとんどおらず、過激なカッコ付きの「保守」と「ネトウヨ」に分かれて、それらが内ゲバをしているという。「リベラルは内ゲバばかり」との論説も以前紹介しているが、右側でも同じことが起きているようだ。

 

 太平洋戦争敗戦後、左右の論陣は左の圧勝になる。当時の保守の論客は、まるきりメディアに取り上げられなかった。特にTVでは与党(自民党)批判の論客ばかりが登場していた。米国よりの意見など吐けず、親中・親ソの論者ばかりがブラウン管を占領していた。

 

        

 

 初めて保守の論客が登場したのが「朝までナマTV」、大島渚野坂昭如西部邁西尾幹二栗本慎一郎舛添要一といった面々だったとある。これにはソ連崩壊という国際環境の変化があって、日本は「政治は対米追従、メディアは政府批判」だけでは成り立たなくなったことが影響している。同時に自民・社会両党による「昭和55年体制」もきしみ始める。ただ本書には同時期僕が見ていた「サンデー・プロジェクト」の記述はない。高坂正堯教授の名前も欲しかったのだが。

 

 息を吹き返した保守論客だが、それからの内閣には裏切られ続ける。自主憲法制定や国防問題、朝鮮総連拉致問題などにはなかなか手が届かない。ようやく小泉内閣で拉致が認められて、5人が帰国。次の安倍内閣では国民投票法などが成立するも、短命に終わった。そして(悪夢の)民主党政権が来る。

 

 小泉時代からインターネットが爆発的に普及、政治にも影響を与え始めた。民主党政権で不遇をかこっていた保守は、より過激な「保守」と「ネトウヨ」に分派したとある。最近少し付き合いのできた「正論」の関係者などの顔を思い浮かべながら、なるほどこういう過去があったのかと知りました。