新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

処刑12日前の特命捜査

 歴史ミステリが得意な英国作家ピーター・ラヴゼイには、30冊ほどの著作がある。いくつかのシリーズがあるが、デビュー作「死の競歩」以来8作の「クリッブ部長刑事もの」が初期のもの。1978年発表の本書は、その最終作品である。

 

 舞台は、1888年ヴィクトリア朝のロンドン。スコットランドヤードCID(犯罪捜査部)のクリッブは、ジャウィット主任警部から特命を与えられる。自分を強請っていた男を青酸カリで毒殺したと自白した、26歳の若妻ミリアム。彼女は死刑が確定してニューゲート監獄に収監されているのだが、大臣への匿名の訴えは彼女には犯行が不可能だったことを示していた。大臣は総監経由で秘密裏の再捜査を命じてきたのだが、クリッブらの直接の上司副総監には内密でやれとの指示。実は総監と副総監は警察内部で対立していて、お互いに足を引っ張ろうとしていたのだ。

 

         

 

 ミリアムの夫ハロルドは写真家で、青酸カリ(*1)を特殊なカギのかかる金庫に保管していた。カギは2つしかなく、ひとつはハロルドが持ちもうひとつは被害者が持っていた。ミリアムはハロルドのカギを使ったと思われたのだが、その日ハロルドがカギを持っていたことが証明されたのだ。

 

 このままでは、無実の罪で処刑が行われてしまうかもしれない。12日後に予定されている処刑までに、事件を再捜査するのがクリッブに与えられた特命だった。物語はクリッブたちの捜査と、処刑執行人ベリーが死体を送る予定のマダム・タッソー蝋人形館との交渉が並行して進んでいく。処刑の日が迫る中、クリッブは4年前にミリアムの友人の娘が、やはり青酸カリで自殺していたことを知る。

 

 英国推理作家協会(CWA)のシルバーダガー賞を獲得した作品で、難しい状況の中でのクリッブ部長刑事の推理が冴える。時代背景も含めて興味深い物語でした。作者の作品をもっと探してみることにします。

 

*1:当時はDPEに青酸カリや卵白を用いていた