新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

海軍に入ったラム君

 1942年発表の本書は、A・A・フェアの「バーサ&ラム君もの」。前年末の真珠湾攻撃により、米国は戦争状態に入った。筆の早い作者は、さっそく時勢に合わせた作品を仕上げたという次第。パートナーのラム君を軍隊にとられては大変とバーサは四方にてを廻すのだが、ラム君はさっさと志願して海軍に入隊。本土にいるのだが、面会も出来なくなってしまう。

 

 そんなバーサの探偵所には、また奇妙な依頼。街角でネクタイを売る盲人が「車にはねられて、その車に乗せられていった娘を捜してくれ」というもの。それらしい事故報告は警察にもなく、病院にかつぎこまれた形跡もない。

 

        

 

 ラム抜きバーサは、それでも新聞広告を使って目撃者を見つけ、事故に遭った娘を見つけることができた。しかしその娘の雇い主ハーロウ・ミルバーズは数日前に奇怪な死を遂げ、その遺産(50万ドル以上)は唯一の親族ではなく、ハーロウと同居していた家政婦一家に贈られることになっている。

 

 さらにバーサにからんできたペテン師ジェリイが、盲人の自宅で散弾銃の仕掛けで殺されてしまった。発見者なのに第一容疑者にされたバーサは、ラム君に電報を打ち解決のヒントをよこせと迫るのだが・・・。

 

 翻訳者は「コミさん」こと田中小実昌氏。楽しみながら翻訳したことは重々分かるのだが、40年前の翻訳ゆえ不適切なところがある。盲人をメ〇ラと、作中100回くらい表記している。もし再版するのであれば、是非訂正して欲しいものだ。

 

 本筋ではないが、最初の被害者ハーロウは、変わり者の研究者。戦争の棋理を本にしようとしていたのだが、その主旨は、

 

「攻勢をかけるものは有利に戦争を進めるが、戦線が広がってしまうと占領地の統率に力を奪われ、守勢に回りやがては滅びる」

 

 というもの。作者なりの、日本軍の攻勢に対してのコメントである。

 

 切れ者のラム君は、電報でヒントを送って来るだけ。電報料金にも血圧をあげながらのバーサの活躍(!)、お見事でした。