新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

難民保護のための国連活動

 2019年発表の本書は、今話題のUNRWA国連パレスチナ難民救済事業機関)を経てUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)駐日代表である滝澤三郎氏の国連レポート。日本政府の法務省を辞め国連職員となった筆者は、グローバル化の先進組織である国連で生き延びている。これは国連職員の多くが1~2年の契約で働いている中で、珍しいこと。ジョブ型雇用が徹底していて、労働条件はいいが成果評価は厳しい。こんな中で生き延びられるのは、

 

・誰かの役に立ちたいとの強い意志

・役に立てるための能力

・能力を磨くための不断の努力

 

 がある人だけである。性格的には自己主張のできる「野心家」が向いているが、トランプのように一方的な主張だけでは良くない。相互の利益を考えてアサーティブな提案ができる必要がある。

 

        

 

 会議ばかりする国連ではなく、問題のある地域で解決に尽力する国連でありたいのだが、予算は決して多くない。UNHCRでも4,000億円/年ほどしかない。その一方、冷戦終了後(地方でのコンフリクトが増えて)難民は増え続けている。2018年の時点で、国連が保護しているのは7,500万人ほどだが、全員が難民ではない。難民の定義ははっきりしていて、

 

・人種、宗教、国籍、政治的意見、特定の集団に属することが原因で

・迫害を受ける恐怖があり

・自国の外にいて

・自国政府から保護されない、保護を望まないこと

 

 の4条件がそろう必要がある。国内避難民(例:クルド人)や国内で迫害されている人(例:ウイグル人)は難民にカウントされない。日本で難民が少ない理由のひとつ(*1)は「迫害を受ける」可能性について、法務省が非常に厳しく見ているからだという。

 

 日本人が国連をはじめグローバルな場で活躍していない理由は、文化的な影響が大きいからだとある。例えば、日本では沈黙は金だが、グローバルでは「鉛」である。最後にこれからグローバルを目指す人たちのために、9つのアドバイス(*2)がありました。僕には手遅れですが、参考になりましたよ。

 

*1:地理的条件、文化、言語等の壁で難民側も日本を選びにくい

*2:リーダーシップ、自己主張、異文化コミュニケーション、上司管理等