新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

現代「けまり」の手掛かり

 1993年発表の本書は、多作家斎藤栄のノンシリーズ。横浜市役所勤務だった作者には、神奈川県を舞台にした作品が多い。本書もその1編だが、なぜかWikipediaに作品の紹介がない。まあ、このころ月間1冊ペースで長編を発表しているので、さしものWikipediaも漏らしたのかもしれない。

 

 横浜市緑区にある明法大学のサッカー部が、事件の中心。大学助教授で鎌倉将軍(特に頼家)を研究している椎橋美喜男が、サッカー部のコーチ。彼は政界の大立者椎橋大通の息子だが、女にだらしのない放蕩者。それでも親の七光りで、若くして助教授になっている。

 

 サッカー部の監督をしている房子はまだ学生だが、美喜男に言い寄られて婚約できると思っていた。2人は鎌倉の別荘で逢瀬をしていたところボヤ騒ぎに間に房子が刺殺されてしまった。第一容疑者にされたのが、サッカー部の部長で県警加賀美警部の息子藤夫。

 

        

 

 房子が死に際に残したことば「けまり」の意味も分からず、他の手掛かりも得られぬまま。そんな中、サッカー部の公式戦の最中にCFの脇が倒れた。解剖の結果、ニコチン毒を絆創膏に塗られた毒殺だとわかる。絆創膏を貼るのを手伝ったのも藤夫で、加賀美警部は息子を信じて単独捜査を始める。警部がニコチン毒と「けまり」の謎を解いた時、ついに頼家の暗殺をモチーフにした浴室での密室殺人が起きる。

 

 480ページに及ぶ大作なのだが、どうしても「書き流し」の印象がぬぐえない。鎌倉殿(頼家)暗殺の背景や頼家のけまりへの想いなど、興味を惹くエピソードも出てくるのだが、それが現代の大学サッカー部における青春群像と結びつかない。密室のトリックにしても、頼家暗殺を意識しすぎてリアリティを欠いているし、そもそも密室にした意味が薄い。

 

 申し訳ないですが、1冊/月で長編ミステリーというのは、いくらなんでも多作すぎますよね。