新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

公共放送の改革案

 2023年発表の本書は、早稲田大学教授(公文書研究)有馬哲夫氏の「NHK論」。NHK受信料問題は、時折国会でも取り上げられ是非が問われる「広義の税金」。筆者は、各国の公共放送の実装やスタンスを論じながら、NHKのあるべき姿を提案する。1世紀前に「私設無線事業」として始まったラジオ放送は、電波は国の(軍の)ものとする軍国主義プロパガンダとなり、WWⅡ後もGHQプロパガンダとして利用した。

 

 電波は公共のものだったはずだが、民間人主体の放送委員会(のちの電波監理委員会)が廃止されて、その機能が郵政省(現総務省)に移って現在に至っている。電波同様公共のものである放送(特に公共放送NHK)も、事実上総務省支配下にあり本当に中立かは疑問があるという。

 

        

 

 一方受信料は、受信機材(*1)を設置したものはNHKと受信契約をすると定められているものの、受信料を支払う義務はない(*2)とされる。かつては放送事業者がコンテンツを作り配信する「垂直統合」だったが、今はYouTubeやNetflicsなどがコンテンツも提供する「水平分業」になっている。

 

 英国は公共放送BBC改革を考え、受信料に相当する許可料についての議論が盛んだ。背景には、BBCの視聴時間が20分/人日なのに、YouTubeは64分、Netflixは40分となっていることがある。実はNHKBBCよりも見られておらず、5分/週も見ない人が45%に上るとする調査結果もある。BBCが公共放送は英国発の優良コンテンツを作ることに傾斜しようとしているのに、NHK(&総務省)にはその意識がないと筆者は批判する。

 

 筆者の改革提案は、

 

・国際放送や政策広報関連は廃止し、YouTube上に移す

・TV税やコンテンツ料収入で運営する「メディア公社」がコンテンツを作る

・日本版FCCを設置し、電波オークションなどを実施する

 

 というものでした。BBCがこのままではNetflixらに勝てず、英国の優良なコンテンツも駆逐されるとした危機感には、全く同感です。

 

*1:これまではTV・ラジオだが、PC・スマホも対象になろうとしている

*2:放送法の規定