新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

凶銃M-16が狙う生存者

 1975年発表の本書は、多作家(600冊以上の作品がある)西村京太郎の、比較的初期の作品。以前「寝台特急殺人事件」で、十津川警部・亀井刑事の名コンビによるトラベルミステリー・シリーズの始まりと紹介したが、それ以前の本書でも両者は登場する。作者はこのころは特定の探偵役を持たずに、ノン・シリーズばかり書いていた。しばらく肝臓を病んでいて、復帰作としてカッパノベルズに書き下ろしたのが本書である。

 

 インド洋の巨大タンカー遭難に始まり、国内でも横須賀・野沢温泉恩納村と舞台を変え、さらにブラジルから南アフリカに及ぶ捜査行は、当時としてはとても新鮮なストーリー展開だった。表紙のM-16のシルエットもあって、割高なカッパノベルズの新刊を、学生のお小遣いをはたいて買った記憶がある。

 

 50万トン級タンカー<第一日本丸>はサウジアラビア原油を満載、インド洋を南下している時に遭難する。燃える海の中から脱出しカツオ漁船<第五白川丸>に救助された、宮本船長以下6名の乗組員は「突然大きな衝撃を受け炎上した。磁気機雷にでも接触したかも」と言う。残る26名の乗組員は別のボートで脱出したが行方不明のままだった。

 

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 事故から半月経ったある日、宮本船長が自宅を出たまま帰らず、翌朝死体となって発見される。事故か自殺と思われたが、警視庁には「6人の生存者を殺す」という脅迫文が届く。捜査一課長は配下のなかでもエース格で、ユーモラスな風貌から「タヌキ」とあだ名される十津川警部補を呼び、捜査にあたらせる。しかし早々に大井川鉄橋でもう一人の生存者の車が狙撃され炎上、細君ともども亡くなってしまう。

 

 行方不明の26人のうちの一人で自衛隊経験のある赤松という男が、インド経由で帰国していたことが分かり容疑者として手配されるのだが、狙撃者は次々に生存者を殺していく。ついに生き残ったのは妻子ともどもブラジルに移住した船医だけになってしまう。翻弄され続けた捜査陣も、ついに赤松を見つけ自殺に追い込むのだが、十津川警部補は相棒の亀井刑事に「事件は終わっていない。<第二日本丸>を見に行くぞ」という。

 

 45年前に読んだ作品ですが、その時もスケールの大きさに圧倒されました。作者は先年亡くなりましたが、特に初期の頃の作品を探してみますよ。