2023年発表の本書は、読売新聞記者小林泰明氏の「GAFAM対政府録」。米国では<ビッグテック>と呼称されるこれらのグローバル(&インターネット)企業たちは、世界中で各国政府とコンフリクトを起こしている。筆者は日本と米国で、7年間にわたって政府と彼らの攻防を取材してきた。彼らの強みは、最先端のデジタル技術・膨大な資金力・優秀な人材・訴訟能力である。その結果、彼らは市場を独占し秘密主義に走って巨富を得た。これを政府が規制しようとした、攻防の記録である。
特にAppleについての記述が多い。アプリを一般に解放せず、30%もの手数料を取ってi-Phone用のアプリを規定している。これに対し解放を求める法律を日本政府は準備(*1)した。独占はけしからんということだが、この規定(と手数料等)によってユーザはサイバーリスクを軽減して護られているとの主張は根強い。
Amazonについては、出店者から法外な手数料(やはり30%)を取っているともされる。出店者は多い場合には売り上げの9割を同社に頼るようになり、ほぼ隷属状態にある。また物流現場では従業員の過酷な労働も指摘された。
Googleも主な収入源は広告だが、スマホを含めた個人データの蓄積は膨大で、人がどのフロアにいるかもわかる(*2)ほどだ。Facebookも「いいね」のつけ方などから、利用者の志向・思考をかなり詳細に知っているとある。
これらに対して日米政府が使えるのは、公取(&FTC)の力だけ。しかしバイデン政権肝いりのFTCカーン委員長が繰り返す告発も、これまでは効果を生んでいない。各社は強力なロビイーイング体制を敷き、規制法案を潰しに来る。米国議会が公聴会で各社TOPを審問するのだが、追及しきれていない。
最初から国境に関係ないビジネスをしている彼らに、従来型の産業のような規制は難しいのではと思わせた書でした。
*1:本書執筆の時点では成立しなかったが、曲折を経て先月成立。ただしこれからも係争は続くだろう
*2:気圧データを取っているとこの書は指摘している