新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

”Five Eyes”会合を狙うバイオテロ

 2019年発表の本書は、戦闘級のチャンピオンであるマーク・グリーニーの「暗殺者シリーズ」。前々作に登場した<ロシアのグレイウーマン>ゾーヤ・ザハロフと、コート・ジェントリーの共同作戦が見ものだ。

 

 CIAの中にモグラがいるようで、作戦が漏れて妨害や被害を受けるようになっていた。CIA作戦本部は<毒林檎作戦>でモグラをあぶりだそうと、ゾーヤ、コートともう一人の工作員を選抜する。ところが、

 

・ゾーヤは隠れ家を急襲されて単身逃亡

・コートは欧州から米国に移動中に事件に巻き込まれロンドンでの単独行に

 

 なってしまう。いずれも情報漏れが原因らしい。ゾーヤは保護されていたCIAも信用できないと、父親の死の謎を追ってSVR時代のツテやノウハウを使ってロンドンに向かう。コートは空港から拉致された銀行家を追って、イングランドを駆け回る。この銀行家がモグラの情報を持っているらしいのだが、モグラを操るロシア勢力が彼を奪ったようだ。コートもバックパックひとつしか持っていないので、行く先々でさまざまな調達(スリや盗み)をして真相に迫る。

 

        

 

 折しもロンドンでは"Five Eyes"の会合が開催されることになっていて、2人のハンドラーであるCIA作戦本部のスーザンもその中にいた。会合には各国から総勢400人以上の諜報機関の幹部が来て、インヴァネスの古城に集まる。ここにペスト菌を撒くテロが企画されているのだ。北朝鮮のバイオ研究者らを使って、テロを狙うのはロシアの元将軍。彼こそは死んだはずのゾーヤの父親だった。

 

 ゾーヤは拉致されて父親と会うが、和解はならず「私が殺す」と決意を固める。コートはゾーヤに父親を殺させないことを緊急任務(原題のMission Critical)と考えて2人を追う。超ヘビー級のボクサーで人を殺すのが趣味という用心棒と、3度も素手の闘いを強いられたコートは満身創痍だが・・・。

 

 やはり800ページがあっという間の会心作でした。<ジャック・ライアンもの>から降りても、作者は好調そのものです。