新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

さよなら、スペンサー一家

 2011年発表の本書は、全39冊を数えるロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の最終作品。1973年「ゴッドウルフの行方」で始まった、ボストンのタフガイ私立探偵スペンサーとその仲間たちのシリーズは、作者の急逝という形で幕を下ろした。

 

 スペンサー一家は巻を追うごとに拡大していて、多様な人種や得意技を持つメンバーが入れ代わり立ち代わり、物語を深くしてくれていた。相棒ホークももともとはスペンサーの敵だった男、メージャーはホークに憧れながらも対峙したギャングだ。ガンマンや弁護士、娼館の経営者など多くの人物が「一家」に入っている。もちろん精神科医スーザンと、二代目にはなったが常に一緒の愛犬パールもいる。

 

 本書では、そこに新顔が加わる。大学フットボールのスター選手だったゼブロン・シックスキル(通称Z)。先住民クリー族の出身で、力自慢の大男。今は用心棒稼業をしている。

 

        

 

 スペンサーは、<豚野郎>とあだ名される映画俳優ジャンボが、20歳の娘をレイプして殺したとの事件を依頼される。世論は「すぐ吊るせ」と激高し、警察すらも冷静な捜査が出来ないのだ。冷静な目を持つ探偵として事件に介入したスペンサーは、ジャンボの護衛をしているZと出会う。

 

 事件現場に立ち会ったZの聴取をしようとするスペンサーだが、拒否される。再三ジャンボにコンタクトすると、ついにZが殴りかかってきた。体力と若さでまさるZだが、闘い方を知らないのでスペンサーにヒネられ、怒ったジャンボにクビにされてしまう。しょげるZを、スペンサーは鍛え直すことにする。

 

 ジャンボのバックにいるのは西海岸のマフィア。最後はマフィアの殺し屋たちとの死闘になるが、Zはボウイナイフを使う夜の殺し屋に変貌していた。

 

 次の作品があれば、Zは凄いキャラになっていたでしょう。作者自身がマーロウものを書き継いだように、誰かスペンサーものを書き継いでくれませんかね?