2016年発表の本書は、マーク・グリーニーがトム・クランシーから引き継いでいる「ジャック・ライアンもの」。グリーニーも本書でこのシリーズから手を引くことになり、共著としての最終作になる。前作「欧州開戦」で、バルト海を巡るロシアの挑戦を退けたライアン大統領と<ザ・キャンパス>のメンバーだが、今度は中東からの挑戦を受けることになる。
発端は英雄である海軍中佐が休暇中に襲われたり、CIAのイラン工作員が拘束されたこと。いずれも米国政府の最高の機密情報が洩れない限り、起こり得なかった事態だ。何者かが<闇Web>に高度な情報を流しているらしい。これを得たサウジの戦略家ビン・ラシードが、ISの戦術家アル=マタリを使って、米国の中東への関与を促そうとしたらしい。
そもそも機密情報は、中国政府の依頼を受けた集団のハッカーが、米国政府のセキュリティ・クリアランス制度の申請情報を入手したものだ。この<密告者>という男は、中国だけではなく広く「活用」してもらおうと<闇Web>で販売することにしたのだ。
もちろん申請情報だけで、その人物の今が分かるわけではない。海軍中佐のケースでは、妹のSNSなどから中佐がそのパーティに参加することが分かって襲撃されることになった。<ザ・キャンパス>のIT部長バイアリーは<密告者>と同じ手法を使って政府機関に侵入、情報もれルートを確認しようとする。
国家情報長官のメアリは、ライアン大統領の意を受けて政府機関の要員を使わず事態に対処しようとする。それに最適なのは(大統領の息子も含む)<ザ・キャンパス>のメンバーだが、度重なる活動で工作員は3人まで減ってしまっていた。
一方アル=マタリは、30人ほどの米国在住イスラム教徒を南米キャンプで戦闘員に仕立て、米国内でのテロ計画を進めていた。DCの自宅でDIAの分析官が爆殺される事件も発生、ライアン大統領は窮地に追い込まれる。
<続く>