ジェラール・ド・ヴィリエの「プリンスマルコ」シリーズも延々続くのだが、ドン・ペンドルトンの「マック・ボランもの」も凄い。全344巻もあって、どこからかは作者ではなく多くの作家の競作になっていったらしい。創元社が翻訳権独占で邦訳を出していたのだが、それも60作で終了し以下の巻は日本では発売されていない。
ベトナム戦争の英雄で狙撃手のマック・ボラン軍曹は、父母と妹をマフィアに殺され復讐を誓う。何しろ2年間で北ベトナム将校32名、ベトコン指導者46名を射殺し<死刑執行人>のあだ名を持つ男だ。マフィア側も組織の力で次々と新手を送るのだが、傷つき苦しみながらもボランはマフィア組織に痛手を与え続ける。
1970年発表の本書は、シリーズ第三作。第一作で仇のフレンキ一家を潰し、第二作ではベトナムの戦友7名を加えた<抹殺部隊>を作ってディジョージ一家を叩いたボランだが、戦友は全員死に自らも傷ついた。本篇では、メディアにも知られてしまった顔を変えるため、戦友の整形外科医に顔を変えてもらおうとする。もちろんマフィアはボランを殺そうとし、警察も追っている。
顔を変えたボランは、凄腕の殺し屋になりすましてディジョージ一家に潜り込み、彼らの資金源であるメキシコからの麻薬密輸ルートを叩くことにする。凄惨な場面も多く、まだ10歳代だった僕が衝撃を受けた作品群だった。でも、10作ほどで飽きてしまい「プリンスマルコ」に走ってしまったのだが・・・。
創元社が「マフィアへの挑戦」とシリーズ名を付けたものの、38巻以降マフィアとの闘いは終わり、ボランは大統領の直属でジョン・フェニックスと名を変えテロリストを相手取ることになったそうです。次々に強敵・・・というパターンでは、もうマフィアの出る幕ではなくなったのでしょうね。