1983年発表の本書は<シカゴ・トリビューン紙>出身のボブ・ライスが描く軍事スリラー。1942年夏の米国東海岸における、ナチスドイツの軍事行動がテーマである。先年の真珠湾攻撃によって米国は第二次世界大戦に正式に参戦するのだが、それ以前から英国やソ連に軍事援助はしていた。その物資の多くは、東海岸のポートランドやボストンから欧州に積み出されている。
これを苦々しく思っていたヒトラーに、秘書役マルチン・ボルマンは奇襲計画を耳打ちする。キャスコ湾を扼する位置にあるキャプテンズ島には米軍の40cm砲陣地があり、両港を守っていた。これを奪取することで、上記の輸送艦隊を沈めることができるというわけ。
命を託されたのは、スペイン内戦以降ドイツ軍の特殊部隊の指揮をしてきたアメリカ人ジョン・ライカー。彼はノルウェー戦の後引退し、部下たちも東部戦線に送られていたのだが、ボルマンに呼び出される。
ライカーは東部戦線に赴いて、かつての部下を探すが期待した副官は戦死していた。彼は残っている隊員を指揮してT-34戦車などと闘い、再び信用してくれた部下たちと特殊訓練に入る。
キャプテンズ島には民間人40人ほどと、砲兵隊・守備隊が100人余りいる。なぜかここに赴任してきたハイドン中尉は、島の娘コリスと恋に落ちるが、コリスの父親はナチスの内通者だった。米国パスポートを持つライカーは、民間人を装って島に潜入。40名ほどの部下たちはUボートで上陸のタイミングを待っている。
サンケイ文庫の諸作は、テーマは面白いのだがB級作品が多い。本書もそのひとつで、ヒトラーが日本軍に嫉妬して「ナチス流の真珠湾を!」と叫ぶあたりまではいいのだが、リアリティが無くてアクションも平板だ。ハイドン中尉の活躍も、ほとんどは運任せ。コリスとの恋も、味付けには程遠い。
うーん、残念な軍事スリラーでしたね。むしろ架空戦記に位置付けた方が・・・。