英国<エコノミスト誌>が、所属の編集者たちに「2050年の世界を予測する」企画を課し、2012年に出版されたのが本書。邦訳にあたり船橋洋一氏が解説を付けている。これも長く本棚に眠っていたものだが、世界の激動を見ているうちに探して再読する気になった。全部で19分野あるが、主なものを12年経っての検証もかねて見てみよう。
■人口
2050年には、平均年齢は40歳、先進国では100歳が普通になる。出生率が2.1になって人口増が止まる。結婚が半減、離婚も増え婚外子が5割になる。中国の人口は2025年に14億人でピーク。
SNSで知人の影響力が増し、集団知が大きくなり、従来マスメディアに頼らなくてもよくなる。ビッグテックのプライバシー支配が懸念されるが、一社支配も長くは続かない。自動翻訳が普及しても、英語の世界支配は崩れない。
■戦争
技術の拡散によって、テロ組織などが大国を襲うことも可能になる。地域紛争も多発し、核が使われるかもしれない。ドローンなど戦争のロボット化は進展する。先進国は財政悪化で、十分に軍事費を捻出できなくなる。
■民主主義
自由主義国では後退し、独裁国家では前進する。課題は2つ、民意が操作されてゆがめられることと、政治献金によって政策がゆがめられること。
■経済
米国以外のG7国のGDPは、中国・インド・ブラジル・ロシア・インドネシア・メキシコに抜かれる。世界経済の半分はアジアが担うことになる。世界規模での貧富の格差は縮小する。中産階級は、2030年に10億人を超える。情報技術の発達により、企業はフラット組織に変わってゆく。
■科学
生物学の発展がキーになる。2030年までにすべての生物のDNAが解析され、生命誕生の秘密も明かされる。情報収集目的の宇宙利用が進み、民間サービスとしての宇宙観光旅行も可能になる。
うなずけることも多いのですが、特に技術の進歩は当時の予想を上回って、2050年のはずが、目の前に来ていることも多いです。<エコノミスト誌>には、続編の発行をお願いしたいです。