新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

日帝の西海岸支配1988

 2016年発表の本書は、アジア系米国作家ピーター・トライアスの第二長編。邦訳されたのは本書が最初である。帯にあるように第二次世界大戦は枢軸側が勝利、米国は日独によって分割統治されている。そんな世界の北アメリカ大陸西海岸での、

 

日帝に抵抗する米国人ゲリラ

・鎮圧を図る帝国の軍隊や特高

・ゲリラに身を投じた日本の将軍

・それを追う日本軍大尉と特高の女

 

 の姿が描かれる。そもそもなぜ米国が戦争に負けたかというと、1948年に核兵器や表紙の絵にある「メカ」を開発し使用したから。「メカ」は日の丸を付けたモビルスーツといったイメージ。

 

 1988年になり、40歳の平凡な日本軍大尉石村は、西海岸生まれで語学堪能なことを買われて、米国ゲリラに身を投じた日本の六浦賀将軍を追うミッションを与えられる。実は将軍の今は亡き娘クレアは、石村の友人でもあった。

 

        

 

 いやいやミッションに参加する石村を駆り立てるのは昭子は、特高警察の課長。冷酷な女で、捕えたゲリラの女を残酷な方法で拷問死させる。この世界では以上に科学技術の発展が早く、この時点でインターネットもスマホも存在し「メカ」はビームサーベルまで使う。

 

 将軍の(日帝からみての)罪状は、支配を揺るがすようなビデオゲームを開発し運用させていること。第二次世界大戦を舞台に、米軍が日本軍を叩きのめすゲームで、ゲリラを含めた米国系市民は嬉々としてゲームに打ち込む。

 

 石村は陸軍士官学校の落第生だが、ゲーム開発の能力は高かった。石村と昭子はゲリラたちとリアル空間だけでなく、サイバー空間でも戦わなくてはならない。そんな時、石村はようやく昭子に認められる働きができるのだ。

 

 解説では、現代の「高い城の男」と評価しているが、僕から見ればゲームヲタク度が強すぎてとてもディックの名作を比べる気にはなれない。細部に表れる日本風の小道具等も、かなり悪趣味。日本のマンガ&ゲームとリアル日本(&日本人)を混同した迷作でした。もちろん、現代日本への警句なのかもしれませんが。