2019年発表の本書は、同志社大学教授白戸圭一氏(国際関係学)の現代アフリカレポート。日本人が通常持っている、アフリカのイメージを一新するものだ。筆者は30年近くアフリカに係り、その変化を見てきた。帯にあるように「もう援助は要らない。投資してくれ」というのが、一部危険な地域を除いた現状である。
かつては「多産多死」社会だったのだが、ゆっくりとでも医療技術や設備、薬剤などが普及してくると「少死」になって平均寿命も延びてきた。しかし「多産」のほうはあまり変わらないので、人口爆発が懸念される。ずいぶん前から都市は過密状態である。
感染症が怖い地域というのも、かなり軽減されてきているが、豊かになる人が増えた結果、治安が悪くなっている。南アフリカの例では、白人を含めた中間層以上の外国人ではなく、エッセンシャルワーカーの外国人には厳しいヘイトがある。
暴動や自爆テロのような危険が、突然起きることも増えた。人口増のせいなのか、事件の規模はどんどん拡大している。日本人からは分からない差別や格差が、澱のように溜まっているのかもしれない。
一方、国際社会の中でアフリカ諸国の発言力は増していて、かつてドイツ・日本などが提唱した国連安保理改革案を、アフリカ諸国が葬ったこともあるという。どうしても中国の影が濃くなっていて、「COVID-19」以前ではあるが、中国の援助を肯定的にみる人たちが85%に達するとの統計もある。ロシアはもちろん北朝鮮と親密な国もあって、G7諸国の「アフリカ諸国は中国らに食い物にされている」との認識は、現地では通用しない。
翻って日本はというと、TICADなどを長くやっていながら「左右の鎖国」の影響で、十分な認知度が得られていないとある。
右の鎖国:移民排斥を掲げる右派
が、いろいろな面で顔を出し、国際社会の中での日本の地位を貶めている。地球規模でみれば、人口爆発のアフリカからG7諸国に多くの移民が来るのが平準化でしょう。さて、そんな議論ができるでしょうかね?