1968年発表の本書は、イタリアのミステリーとして珍しいハードボイルド風の警察小説。ローマ警察外人課のベッリ警部は、辣腕刑事であるが(イタリア警察では普通だが)裏稼業を持っている。個人が望まない人物を国外退去させるなど、賄賂を貰って便宜を図るのだ。真夏のこの日に受けた依頼は、ユーゴスラビアの踊り子に篭絡された息子ミノを助けて欲しいとの内容。依頼者は高名な弁護士で富豪だが、ミノは死んだ先妻の子供で、腫れ物に触るように育ててあと1ヵ月で成人になるという。
踊り子の居留資格を左右する権限を外人課のベッリが持っているから、要は居留資格を取り消して欲しいという依頼。50万リラで引き受けたベッリは、踊り子を脅して退去させるように仕向けるのだが、ミノと踊り子の背後にいる映画関係者ロマーニの殺害死体に遭遇する。
ロマーニはその踊り子だけでなく、関係を持った複数の女優などと複雑な人間関係にあり、殺害動機を持った人間は多い。ミノもその一人だ。捜査は殺人課バルド次長が担当し、ベッリは参考人として尋問される側に。それでも自らの矜持と裏稼業の為、ベッリは独自に真犯人探しを始める。
8/13に始まったこの事件は、8/15に決着する。この3日間、ベッリは単独で行動し何度も殴られる羽目になる。裏稼業なので仲間は使えないのだが、拳銃を取り出しはしたものの携行は(なぜか)止める。目星を付けたところに(勝手に)住居侵入をするので、殴られても文句は言えない。多くの血が流れ、ついにミノまでが死んでしまった。そしてようやくベッリは事件の真相を掴む。
作者のルドヴィコ・デンティーチェは、狩猟や釣りを専門とするスポーツ記者。ミステリー好きが高じて自ら本書を書いたと、解説にある。汚職警官ではあるが、矜持を持ったベッリの行動様式は、まさにイタリアン・ハードボイルドでしたよ。