新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

神津恭介平成三部作スタート

 しばらく前に紹介した高木彬光七福神殺人事件」では、作者も主人公神津恭介教授も年齢を重ねていた。作者の体調不良もあり、かの作品(1987年)で恭介のシリーズは終了となるはずだった。しかしTVドラマ「神津恭介の殺人推理」の放映(恭介役は近藤正臣)もあり、人気のあるキャラクターを出版界が放っておくはずもない。作者がデビューのころから付き合のある人が「今度出版社を作ったから何か書いてくれ」と言ってきて、少し体調の戻った作者は「平成三部作シリーズ」を書くことになる。1991年発表の本書が、その第一弾である。

 

 年齢は書かれていないが、恐らくは70歳前後だろう恭介と、同級生の松下研三だけでは華がない。作者はこの三部作にヒロイン清水香織を加えることにした。クイーンの悲劇三部作「Zの悲劇」で、老優ドルリー・レーンに、サム警部の娘ペイシェンスを添わせた故事に倣ったのかもしれない。

 

 香織は東洋新聞の社長令嬢、大学在学中にパーティで恭介に会い、のぼせ上ってしまった。恭介は、彼女が逢った初めての「一流の男性」だったからだ。神津先生と事件の現場に立ちたいと考えた彼女は、父親の新聞社に記者として入社する。

 

        

 

 「神津先生と一緒」の願いは、配属早々叶えられた。山手線の列車内で青酸中毒で死んだ男の現場に、東洋新聞の山下記者がいたことがきっかけで、東洋新聞は連続殺人事件の特ダネを得るようになったからだ。

 

 調査の結果、男は銀行マンだったが、一皮むくと「半グレ」のような生活をしていて、麻雀仲間と若い女性への暴行・脅迫を繰り返していたらしい。キャバレーのマスターで三崎という男が「3人組のうち銀行マンが殺され、電機メーカーの男も行方不明。次に殺されるのは俺だ」と言ってきた。東洋新聞の記者たちは三崎のマンションを24時間体制で見張るのだが、そのマンションから三崎が消えてしまった。人間消失の謎を解いてもらうため、香織たちは伊東に隠遁している恭介を訪ねるのだが・・・。

 

 密室からの人間消失、さらに密室殺人と謎が読者の目の前に積み上げられるが、恭介は意味ありげにだが「結末は見えている」と言う。デビュー当時に戻ったような、典型的な本格ミステリー。「華」のはずの香織にいまいち迫力がないのですが、懐かしさあふれる恭介の復帰作となりました。いやー、クラシックミステリーって本当に面白いですね。サヨナラ、サヨナラ。