新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

看護師ジェシイの冒険

 1956年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーンの異色作。エラリーは一度も登場せず、主人公はリチャード(ディック)・クイーンと看護師ジェシイ・シャーウッド。2人は以前紹介した「真鍮の家」で結婚しているのだが、そのなれそめが本書の事件である。

 

 ディックは63歳になり、NY市警を定年退職させられてしまった。コネチカットの海岸にある友人の家で「毎日が日曜日」の休日を過ごしている。エラリーは小説のネタ探しに欧州を旅行していて、ディックは本当に独りぼっちだ。

 

 海岸の沖の島は、富豪ハンフリイ家の持ち物。長く子供ができなかったアントニイとセーラのハンフリイ夫妻は、嬰児の養子を迎えるため邸を改築し保母としてベテラン看護師のジェシイを雇った。しかしその養子は、悪徳弁護士が闇で「仕入れ」てきた子供。夫妻は百も承知で、高額の裏報酬を支払っている。

 

        

 

 夫妻は子供をいたく可愛がり、それまで遺産相続人としていた甥を冷遇し始める。ある夜ジェシイが気配を感じて子供部屋の様子を見ると、何者かが侵入しようとしていた。夫妻は警戒を厳重にするが、ジェシイが休暇で邸を空けた日、何者かが子供を枕で窒息死させた。現地署長の口添えで事件捜査に加わったディックは、いつの間にかジェシイと接近し、2人で鴛鴦探偵役を務めることになる。

 

 ディックが注目したのは、子供を違法に紹介した弁護士。NYでは有名な悪党で、ディックもいずれ懲らしめてやろうと思っていた輩だ。子供の死に責任を感じているジェシイと悪徳弁護士を訪ねたディックだが、弁護士は何者かに刺殺されてしまった。

 

 次に2人は子供の産みの母親を探し出すのだが彼女も殺されてしまい、犯人のめぼしは付くのだが証拠が掴めないジレンマに2人は陥る。しかしジェシイはある手がかりを思い出し、子供殺しの現場に潜入するのだが・・・。

 

 63歳と50歳の2人、人生100年時代のラブストーリー&警察小説を見事に演じてくれました。