2005年8月末、米国南部をカテゴリ3級の大型台風<カトリーヌ>が襲った。低湿地帯の都市ニューオリンズでは市街地の8割が浸水し、多くの犠牲者が出た。2011年発表の本書は、書店員や古書販売などを経験して作家に転じたサラ・グランの作品。本書でデビューするのは、30歳代半ばの女探偵クレア・デウィット。
私立探偵だが、多分に「カルト探偵教の信者」の性格を帯びている。探偵稼業の師匠コンスタンスは、フランスの探偵シレットの弟子でシレットの著書「探知」をクレアに教え込んだ。例えば、
「謎は指紋や凶器の特定によって解決されない。これらは探偵の記憶を誘発するだけ」
などと警句的な言葉が並ぶ書である。クレアは東洋風の占いを使うなど、並みの探偵とは違う行動をとるが、シレットの言葉がたびたび引用され、読者は「カルト探偵教」の世界に引き込まれていく。

カトリーナの災害から1年半、クレアは災害の時に行方不明になった叔父ヴィクを探してくれと依頼される。ニューオリンズはコンスタンスと探偵修行をした街だが、コンスタンスが殺されてからクレアはブルックリンに移り、10年間ニューオリンズの地を踏んでいない。
ここは貧困層が多く治安が悪い。全米最大の殺人事件発生率と、最低の殺人裁判有罪率を誇っている。未成年の事件も多く、殺人事件で有罪となっても60日ほどで出てきてしまうこともある。そんな街で、ヴィクは長年地方検事補を努め、高潔な人物と評価されていた。未婚で非の打ちどころのない私生活だったという彼に、クレアは逆に疑問を抱く。
被災跡が癒えない沼地も市街地も、貧民街もとても生々しい。多くは黒人かインディアンだが、その日暮らしの貧しさも並みではない。「真実は必ずしも歓迎すべきものではない」とのシレットの警句を胸にクレアが暴いた真相は・・・。
面白いハードボイルドでNCIS-NOで見たこの街を、別の視点から見ることが出来ました。それはいいのですが、ちょっとカルトが過ぎるような気がします。