新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2人のA・ジョンソンの秘密

 本書は「ロウフィールド館の惨劇」をはじめ、何冊かのサイコ・サスペンスを紹介してきたルース・レンデルの作品。「ロウフィールド・・・」の直前、1976年の発表である。ロンドン市西北のケンボーン・ヴェールという自治区では、ときおり女性が絞殺される事件が起きたが、いずれも迷宮入りしている。市民は「ケンボーンの絞殺魔」と呼んで恐れたが、手掛かりがない。

 

 自治区の3階建ての古いアパートには、50歳代の独身男アーサー・ジョンソンが住んでいた。最上階を借り切り、時には大家に代わって管理の手伝いもする古参の住人だ。ガラクタ置き場になっている地下フロアの一角には、彼の秘密の部屋があった。そこには女性のマネキンがあり、彼はその首を絞める遊戯をしていた。そう、彼こそが<絞殺魔>なのだ。

 

        

 

 ある日、空き部屋にアントニー・ジョンソンという男が引っ越してきた。30歳代で博士論文を書いているというインテリ。執筆に向いた静かな所を探していたというが、実は大学で人妻と不倫関係にあり、ほとぼりを冷ます目的の転居でもある。田舎のこととて、同じアパートの住人や付近の人から呑みに誘われるのだが、2人とも時々しか付き合わない。

 

 郵便物のアパート内での配送もしていたアーサーは、間違ってアントニー宛の封書を開いてしまう。そこには不倫中の人妻から「夫に暴力を振るわれている、助けて」とのメッセージがあった。アーサーは手紙を偽造・改ざんすることで、アントニーと人妻の仲を操作しはじめる。一方、同じアパートの夫人を殺し、夫の犯行に見せかけることもする。

 

 何気ない日常を描いているようで、その裏に流れる悪意とそれを産んだアーサーの生い立ちがヴィヴィッドだ。一方のアントニーも、不倫相手に翻弄されて苦しみ続ける。2人の秘密が交わった時、ドラマはクライマックスを迎える。

 

 さすがに手練のサスペンスでした。11月のガイフォークスの祭りにからむシーンは、僕には特に珍しいものでしたよ。