1997年発表の本書は、2ヵ月続けて紹介したドナルド・E・ウェストレイクの「ドートマンダーもの」。シリーズ第9作にあたり、時代が進んだことで450ページを越える大作になっている。「天から降ってきた泥棒」の冒頭、不運にも逮捕されてしまった運転役のオハラも含め、これまでシリーズに登場したドートマンダー一味が総出演する。
すわ大事件かというと、根はドートマンダー自身の私怨。補佐役のガスと2人で大富豪フェアバンクス邸に忍び込んだドートマンダーは、フェアバンクスに銃を突きつけられて逮捕されてしまった。しかも付けていた指輪を、警官の前で「盗まれた」と主張するフェアバンクスに取り上げられてしまう。実は恋人のメイが遺産分けで貰った指輪で、ドートマンダーに譲ってくれたものだったのだ。

激怒した彼は、怒りに任せて脱走。指輪を取り返そうと現場に戻ったが、フェアバンクスはすでにいなくなっていた。20万ドル相当の銀食器と新車(マツダRX7)を盗んでカネに替えたものの、怒りはおさまらない。なんとか指輪を取り戻そうと、フェアバンクスの行方を捜す。
実はフェアバンクスの方も問題を抱えている。4人目の妻を離婚して妖艶な美女に乗り換えたいのと、(偽装)自己破産争議の最中なのだ。世界のあちこちに巨大施設を(隠し)持っている彼は、政府当局の追及から逃げ回っていた。ワシントンDCでの議会公聴会には来ると踏んだドートマンダーの待ち伏せは失敗。最終決戦の場は、フェアバンクス所有のラスベガスのホテル&カジノ。
「易経」によってドートマンダーが狙ってくることを知ったフェアバンクスも、守りを固めている。ドートマンダーは1ダースの仲間に声をかけるのだが、仲間たちは「ついでにお宝をせしめる」ことだけ考えて集まってくる。
紹介文に「爆笑の話題作」とありますが、それほど笑えませんでした。以前のシリーズ作品より、わるふざけが過ぎるような気もします。