新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

黒ずくめの男の死

 1993年発表の本書は、ご存じ津村秀介のアリバイ崩し「伸介&美保シリーズ」。今回の舞台は十和田湖奥入瀬渓流。風光明媚で有名な観光地でもあるのだが、とにかく不便なところだ。僕自身も何度も旅行の計画を立てて挫折し、結局仕事の付き合いで現地の販売会社さんのイベントで呼ばれて初めて行けた。

 

 十和田湖は東西10km、南北8kmのほぼ円形。中心地休屋のバスターミナルから四方に路線が伸びているが、

 

青森駅行き(奥入瀬経由) 所要3時間

大館駅行き 所要2時間余

盛岡駅行き 所要2時間15分

十和田市駅行き 所要1時間40分

 

 と遠距離になる。観光客は本数の少ないバスより、レンタカーを選ぶことが多い。休屋から奥入瀬渓流の入り口である子ノ口まででも、歩くのは難しい距離だ。

 

        

 

 子ノ口から奥入瀬に入ったところで、青酸入りウイスキーを飲んで死んだ男が発見された。五木田というこの男、黒のブルゾン、黒のズボンに黒いサングラスがいつもの姿。横浜のビルオーナーでバーも経営していて、黒ずくめの姿で酒もサーブするという。彼は十和田湖のホテルでは常連、1年前の夏も来ていた。

 

 死者の荷物から、1年前にローリング族の青年が事故死した記事のコピーが3枚(!)見つかった。コピーが3枚というのは尋常ではないと、<毎朝日報>の谷田は<週刊広場>の伸介&美保を誘って事件の裏を探り始める。

 

 青年の事故死に絡んで、五木田は誰かを強請ろうとしていたらしい。強請の対象も特定できたのだが、五木田が死んだと思われる日に容疑者は横浜で同窓会の幹事をしていたという。その朝、奥入瀬で五木田を毒殺し、午前11時前に横浜に戻れるか・・・伸介たちは不可能と結論づけるが。

 

 このトリックは分かりました。このシリーズの僕の正解率は3割くらい。昔の時刻表の抜粋を眺めながら考えるのは、とても楽しいです。