1988年発表の本書は、昨年「このささやかな眠り」を紹介したゲイ作家マイケル・ナーヴァの第二作。前作で33歳だったゲイの弁護士ヘンリー・リオスは、36歳になっている。やはりゲイだった容疑者ヒューを釈放させはしたものの死なせてしまい、ヘンリーは事件後酒浸りになっていたとある。立ち直るのに3年の月日がかかったわけだが、その時助けてくれた友人の弁護士ライリーが、今度は助けを求めてきた。
20歳前のウェイター助手ジムが、同僚ブライアンを刺殺した罪に問われている裁判。ジムはブライアンに男とセックスしている現場を見られ、その件で脅迫されていたらしい。殺害現場にはジムしかおらず、血の付いたナイフを持ったジムを目撃した者もいる。公選弁護人は罪を認めて酌量を受けようとするのだが、ジムは無実だと言い張りその上何も覚えていないという。公選弁護人が降りたいといい、ライリーは後任にヘンリーを推薦したのだ。
ライリーもゲイで、HIVに感染し死にかけている。ヘンリーはジムの弁護を引き受けるのだが、ジムは全く心を開かない。ゲイの少年の事件をゲイを公言している弁護士が担当することはメディアの関心を呼び、映画エージェントまでが大金を積んで映画がさせろと言ってくる。
そんな連中を無視してヘンリーが調べていくと、被害者も目撃者も多くの関係者がゲイだったことがわかる。しかしジムは結局口を閉じたまま、拘置所で自殺を図り植物状態に。告訴は取り下げられたのだが、ヘンリーは真相を追い続ける。
みんなの中でなぜ僕だけ違うのか、両親にどう伝えたらいいのかなどの少年時代の悩み。ライリーやヘンリーのように大人になって公言した人たちの矜持。そんなものが溢れた物語の展開を経て、ヘンリーが掴んだ事件の真相は?
作者は実に文章が上手く、ストーリー展開も巧みです。うーん、ゲイの話がもう少し少なければ傑作にしてあげてもいいのですが。