2020年発表の本書は、10万人の高齢者と向き合ってきた眼科医平松類氏の医療テクノロジー論。AI、IoT、AR、VR、ビッグデータ等を活用して、医療現場と高齢化社会がどう変わるかを示したもの。眼科はむき出しの臓器で画像診断がしやすい眼を扱うことから、他の医科に比べてAIとの相性がいい。だからGoogle傘下のDeepmindは眼科にAI適用することから始めたし、筆者も眼科医としてAI等の技術を積極的に学んだ。
医師には、A)優秀な医者、B)普通の医者、C)藪医者がいるが、AIが診断をサポートすることで、大きな誤りは無くなりC)が減る。また、AIが手術や治療をサポートすることで、効率が高まる。したがってA)が多くの手術・治療をすることができ、より優秀になる。一方B)は機会を奪われて、技術が低下する。三極が二極になるという。

ではAI等の導入で医療費全体が下がるかというと、
・もともと医療費高騰の理由は、高齢化と医療の高度化
・医師の手術や治療の効率が上がっても、その取り分は現在で13%しかない
ので下がることはない。AI導入に医師会が反対するとの意見も(世間には)あるが、眼科や外科などは仕事を奪われると反対するかもしれないが、内科医には大きな影響はない。医師会で声が大きいのは内科医なので、結局AI導入等は進むだろうと筆者は言う。
これまで医療の世界で情報共有が難しかったのは、情報にウソが混じっていることと、正直にデータ入力しても基準が違う(*1)からだ。基準については、AI利用で標準化しやすくなり、統計も信用度が上がるだろう。データの蓄積は、これまであまり重視されなかった予防医療にも効果がある。
ただAIも誤ることはある。珍しい病気でデータが少ないと、精度が落ちる。したがって、AI診断~治療の安全度は算出できても、その安心度は計算できないとあります。患者の側にも、AIリテラシーが必要だということでしょうね。
*1:癌の可能性が50%なら癌と診断するか、70%までいかないとそう診断しないか