新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

還暦カルテット、逃避行から反撃へ

 2022年発表の本書は、歴史ミステリ作家ディアナ・レイバーンが「年配女性のカッコよさ」をテーマに書いたスパイスリラー。WWⅡで各国は、多くの諜報機関を作った。そのいくつかは正式に国家所属となった(例:OSS⇒CIA)が、闇組織として残ったものもある。<美術館>と呼ばれる暗殺者集団がそのひとつで、公式には裁かれないナチの残党狩りから犯罪集団まで「天誅」を加えてきた。

 

 1978年に<美術館>にリクルートされた、格闘術のビリー、射撃のヘレン、爆弾のナット、毒薬のメアリの4人は、美貌も活かして任務をこなした。しかし彼女たちも還暦を迎え、引退することに。<美術館>からは、カリブ海のクルーズ旅行がプレゼントされた。

 

        

 

 クルーの若い男に色目を使ったり、カクテルを呷ったりしていた彼女たちだが、クルーに変装した<美術館>の若手工作員を見つけて緊張する。100名ほどもいる乗客の誰かを狙っているのか?自分たちにコンタクトしてこないのはなぜか?

 

 船を爆砕して4人共消す計画だったと考えた彼女たちは、死を偽装してニューオリンズまでたどり着く。そこにも殺し屋の手は伸び、彼女たちは反撃を決意する。4人は自分たちを消そうとしているのは、かつての上司・同僚だった<美術館>幹部3名とみて、一人ずつ殺してしまおうと計画を練る。居場所が見つかった者から、一人はニコチン毒で、もう一人はナイフで殺せたが、最後の一人は大きな罠を仕掛けて待っていた。

 

 とにかく還暦の4人が格好良くて、可愛い。彼女たちの会話は、一昔前のトレンディドラマの娘たちのそれ(*1)に似ている。孫ができた男の殺し屋とビリーは「最後の恋人は君」などと甘い会話を交わしたりする。それでいて、殺しのシーンはリアル。そう簡単に人は死なないし、思わぬ反撃にも遭う。

 

 軽快な、ユーモアあふれる暗殺者物語でした。続編の情報はないですが、読みたいですよ。

 

*1:ちょうど「男女7人夏物語」の再放送を見ていたので