2022年発表の本書は、ウクライナ戦争が始まってからの200日間に、以前「現代ロシアの軍事戦略」を紹介した小泉悠氏が、識者と7度にわたって対談した記録。対談者と、印象的な議論をまとめてみた。
◇批評家東浩紀氏(2022/4)
・この20年間(グローバリズムを追及した)人類は非常に傲慢だった
・SNS等で大きく世論が動く国と違い、ロシアは20世紀型の戦争を続けられる
◇元自衛官の作家砂川文次(2022/5)
・対戦車ヘリ「コブラ」の操縦士だったから、ロシアが日本侵攻する小説を書いた
・自衛隊の訓練(恐らく実戦も)では火力を割り振る「火力調整会議」が荒れる
・ロシアの弱点は、冥王星の表面積ほどもある広大な国土
◇アニメ映画監督片渕須直(2022/5)
・スマホの大群が、同時多発的に戦争の日常を切り取っている
・ロシアに住んでいる人たちが、(西側)SNSを遮断されてしまったのが残念
◇漫画家ヤマザキマリ(2022/)
・多様な情報があるが、判断を下す時それがフェイクかもしれないリスク
・プーチンは、失脚してカダフィの二の舞になることを恐れている
◇エッセイスト マライ・メイトライン、ルポライター安田峰俊(2022/)
・ドイツ国内は意見が分かれ、旧東独圏は「プーチンも僕らも統一負け組」との声も
・中国のメディアはロシア情報も西側情報も流すが、解説はしない
◇防衛研政策研究室長高橋杉雄(2022/5~6)
・ロシア軍は師団より小さな単位に陸軍を再編したが、この戦場では誤りだった
・初期侵攻は総司令官のない状態で行われ、部隊間連携が出来ず失敗した
・ロシア系の軍隊は火砲の多さが特徴、ウクライナでさえ陸自より多く持っている
・ロシア人はモノを捨てず、冷戦時代の兵器までも続々投入している
・核を含む大量破壊兵器使用の可能性は常にあり、エスカレーションが懸念される
・陸戦は高地が重要、ドローンはどこにでも高地を作り出すことができる
開戦200日、多方面からの分析でしたが、今でも状況は大きく変わっていませんね。