2023年発表の本書は、毎日新聞記者高橋祐貴氏の「TAX Eaterレポート」。財政逼迫なのに市民は「もっとよこせ」といい、増税と言えばもう批判を浴びる。しかし税金が行くべきところに行っていないとの印象はあっても、じゃあ(行くべきでない)どこに行っているかを示してくれた例は少ない。その意味で貴重なレポートである。
東京オリ/パラの例では、1年延期されたこともあって、総費用は1.7兆円にまで膨らんだ。そのうち国と都が1兆円近くを拠出している。例えば会場費等は大手広告代理店に委託されたことで、一般管理費が10%かかった上に人件費単価が最大35万円/日もかかっていた。4割ほどがピンハネで消えているともいう。恐ろしいのは国の会計監査院には、組織員会や都の支出を監査する権限がないこと。副題にあるように「ブラックボックス化」しているのだ。
小泉・竹中改革で「民でできることは民で」とされ、行政機能の一部が民間委託されることになった。その一つが一般社団法人を使った種々の助成。例えば「COVID-19」禍の事業者向け持続化給付金は、(一社)サービスデザイン推進協議会に769億円がわたり、広告代理店が749億円で再委託を受け、それを645億円で外注しているとある。
これは緊急対応案件だが、(一社)環境共創イニシャティブが、2015年からの4年間で30件の委託を受けた合計金額は、3,700億円を超える。一般社団法人は、理事会をおかなくてもいいし、会計監査人も不要、行政の監督もない。持続化給付金の例では、協議会は広告代理店からの領収書(749億円分)を示せば済んでしまう。他にも、
・スピード重視で用途に制限を付けなかった「ゼロゼロ融資」
・消防団の報酬や中山間地の農業支援金が、団員や農家に届いていない
・1,900を越えた「基金」、マイナカード・保険証の基金は執行が4%しかない
霞ヶ関は口では「ワイズスペンディング」といいながら、このように不透明で放漫ともいえる税金の乱費をしているというのが筆者の主張。オリ/パラの件は桁違いですが、細かな中抜きや無駄遣いでも積み重なれば多額になり、政府負債1,200兆円のもとになったわけです。新政権は、これを是正できるでしょうか?