新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

もはや内部補助では立ち行かない

 今日10月14日は「鉄道の日」。それにちなんだ2022年発表の本書は、カナダ在住の乗り鉄YouTuber鐵坊主氏の「日本鉄道の未来」。失われた30年で経済成長せず、少子高齢化や地方の過疎化が進み、コロナ禍が追い打ちをかけた日本の鉄道事業がどうなっていくのかを憂えた書である。

 

 加えて、近年頻発する激甚災害が、鉄路の復旧を妨げている。2016年の台風10号は、根室本線・石勝線の橋梁や地盤に甚大な被害を与えた。JR北海道は、石勝線を復旧させるのが精一杯。いまでも根室本線は、東鹿越~新得駅間でバス代行を行っている。

 

 輸送密度(1日の乗客数)が2,000を割り、営業係数(100円稼ぐのにかかる費用)が1,000を超える路線を各社抱えている。もはや内部補助(*1)では立ちいかず、廃線が重なることになろう。高校生の通学の足すらも維持できなくなっているし、BRT化も初期投資や不通期間のこともあって、容易に進まない。

 

        

 

 実質的に民営化が遅れている、JR北海道JR四国JR貨物は赤字のまま。再国有化よりは、完全民営化をめざすべしと筆者は主張する。東海道新幹線が収益の9割を担うJR東海を除いては、各社鉄道事業では赤字だ。それを救っているのが、ホテル・不動産・観光・建設事業など。特にJR九州はこの点が顕著、商売上手ではある。

 

 ちなみに全国的に夜行列車が「サンライズ」しか残っていない理由は、

 

LCCでフライト料金低下、ホテル料金低下

・新幹線網拡充、高速網拡充による夜行バス増

・JRが分割によってまたがり運行を面倒に思った

 

 のだそうだ。しかし、鉄道は本質的に長距離移動をサポートするものなので、結局は新幹線などの長距離移動手段として、また首都圏などの高トラフィックを要するところに集約していくだろうと筆者は言う。

 

 新幹線延伸や首都圏の新線の可能性など、現状課題と対策(*2)を専門家なりに分析した、面白い書でした。

 

*1:満員電車に耐えている人の犠牲で、地方ローカル線が運行できる

*2:例えば、中央リニア対静岡県知事