1999年発表の本書は、ご存じ<キンジー・ミルホーンもの>の第15作目、ついに「O」まで来た。キンジーは警察に勤務し始めたころに最初の結婚をしている。相手のミッキーは一回り以上離れた刑事、輝いて見えたらしい。警官としての能力は高かったが、酒と女にだらしない性格で、浮気相手に追い出されるようにキンジーは家を出て離婚。ミッキーのもとに相当の私物も残したまま、14年が過ぎていた。
大きな事件を終えたばかりの彼女のもとに、料金未納の貸し倉庫のブツを引き取る業者から電話が入った。14年前にミッキーのもとに残してきた、高校の成績表など彼女のものがあるという。欲しいものは買い取ったキンジーだが、ミッキーのことが心配になる。実はミッキーは何者かに撃たれ、昏睡状態となって病院に収容されていた。
ミッキーを撃った拳銃は、結婚した時ミッキーがキンジーに買ってくれたもの。離婚以来見たこともないのだが、キンジーは容疑者にされてしまう。ミッキーの部屋や資産状況を調べてみると、隠し金はあるものの日銭には困っていたことが分かる。酒が元で警察を辞め、勤めた警備会社も今年クビになっていた。それでもミッキーは、何かを追っていたらしい。
ベトナム戦争に従軍した男が何人か、ミッキーの周辺にいた。そしてベトナムで行方不明になった従軍記者ダンカンのことが、彼らの戦後の暮らしに関わっていたらしい。狙撃されて頭部に重傷を負い、その古傷で死んだ男。両脚を失いながら、成功して豪邸に住むようになった男。負傷して還り、今は上院議員を狙おうかという男・・・。
口の利けないミッキーに替わり、キンジーは事件を引き継ぐことにする。ひねり出した資金でルイヴィルまで旅行したミッキーの目的は何か?ルイヴィルから帰って、直ぐに撃たれたのはなぜか?
500ページ近い長編ながら、一気に読み終えることのできる迫力ある展開でした。このシリーズますます好調。次は「P」ですね。