2020年発表の本書は、NHK取材班が米国大統領選挙でマイクロターゲティングがどのように使われたか、その実態と課題、今後の展望をまとめたもの。2018年に放送した<クローズアップ現代+>での取材内容を基にしている。
ヒラリー対トランプという異色の対決となった2016年の大統領選挙では、大方の予想を裏切って政治経験ゼロのトランプ候補が勝利した。ただ総得票数は、ヒラリー候補が290万票近く上回っていた。大きかったのは、ペンシルヴァニア・ウィスコンシン・ミシガンの3州でトランプ候補が勝利し、49人の選挙人を獲得したこと。ただこれらの州でも、ヒラリー候補との差は1%程度だった。3州の投票数の1%は8万人弱になる。

要はその8万人にターゲットを絞った、マイクロターゲティングが出来ればよかったのだ。トランプ陣営の選対本部は、ケンブリッジアナリティカ(CA)社のデータ分析を活用した。同社はFacebookから不正に入手した8,700万人ものデータを使い、誰にどのような選挙広告をすれば効果的かをはじき出した。なぜFacebookだったかというと、他のSNSにくらべ群を抜いて政治的影響力があったからとある。
SNS利用歴からその人物を、開放性・誠実性・外交性・協調性・神経症的傾向の5分類で評価して「攻め方」を決める。例えば神経症的に恐怖感が強い相手なら「ヒラリーだと押し寄せる難民で米国が壊される」とのメッセ-ジを、必死の形相の難民群の映像とともに送ればいい。
トランプ陣営の黒幕バノン氏は、「政治を変えるためには文化を変える」と言っていたが、ターゲットにした人物に対して個別に文化を変えることが可能になったのだ。AI等の技術進歩により、2020年の大統領選挙では、より巧妙なディープフェイクがと変われるだろうともある。
今日は2024年の大統領選挙投票日、あまり深刻なディープフェイクは報告されていませんが、ひょっとすると「ほぼファクト」にまで進化して、発見できなかったのかもしれません。