新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

銃器マニアの描くガンファイト

 2016年発表の本書は、デビュー作「The Poisoned Rose」で2001年の米国探偵作家クラブ賞ペーパーバック賞を獲った、ダニエル・ジャドソンのスパイスリラー。かなりの銃器マニアで、コネチカット州在住というくらいしか情報がない作家である。おおむね1作/年のペースで執筆していて、これまで2つのシリーズものを発表し、これが第三シリーズの第一作。

 

 元海軍工兵隊(SeaBees)のトム・セクストンは、イラクアフガニスタンで闘い、傷を負って帰国していた。今は片田舎の町工場で働き、12歳年上の恋人ステラとつつましやかに暮らしている。ステラは不動産業者だったが「リーマンショック」で自己破産し、ウェイトレスをしている。

 

        

 

 貧しいが平穏な日常は、トムの元上官で今は民間軍事会社(PMC)を経営しているキャリントンからの呼び出しで一変する。トムの部隊が窮地に陥った海兵隊武装偵察隊を救援した時、トムはその隊の下士官ヒルに命を救われていた。そのカヒルが激しい銃撃戦の末行方不明になっていると、キャリントンは告げる。カヒルは優秀な軍人で、警戒心も戦闘力も高い。並みの相手には姿を見せないだろうから、トムなら信用しているので接触できるという。

 

 元上官の依頼で、かつ命の恩人でもあるカヒルのためならと、トムはNSAに協力して捜索を開始する。しかし直ぐにNSAの女分析官とトムの乗った車は、チェチェン人の集団に襲撃される。冒頭、カヒルチェチェン人が襲うシーンが凄まじい。カヒルは短銃身のコルト1911だけでほとんどの敵を打ち倒すが、恋人を殺され自らも傷つく。襲撃者はミニ・ウージーアサルトライフル武装しているのだ。

 

 CIAの工作、PMCの不気味な役割、スラヴ系ギャングの跳梁に加え、キャリントン含めて誰がトムの味方なのかも分からない。避難させていたステラにも危機が迫る。そして、圧倒的なガンファイトのディーテール。

 

 これはマーク・グリーニー並みのアクション作品です。カヒルはとても強い兵士ですが、トムはそこまで強くなくステラの(知恵の)助けが必要という設定も出色です。作者の作品は本書が初めての邦訳だそうです。続篇を探してみます。