2017年発表の本書は、志駕晃のデビュー作。<このミス大賞>の15回隠し玉賞を受賞した作品で、以後続編(*1)が発表されている。作者は当時ニッポン放送の開発局長、番組プロデュースなどを手掛けてきた中で、ラジオの番組作りで「情報に対するセンス」を養ったと解説にある。フットワーク軽く自由な番組作りができるので、ストーリーテラーとしての才能も磨けるし情報も集まるのだそうだ。
タクシーの中で、男はスマホを拾った。そこに持ち主の恋人麻美から電話がかかってきたことで、事件が始まる。クラッキング能力を持つ男は、スマホを開け麻美のあられもない写真を見つけて「この女をモノにしたい」と思う。男はスマホのデータをダウンロードした上で、監視マルウェアを仕込んで麻美に届ける。麻美とスマホの持ち主である恋人富田は、以後男にすべてを把握されるようになる。

実はこの男は、黒髪の美しい女を見つけるとSNSやメールを乗っ取り、殺してからは部屋まで乗っ取って彼女の下着など付けて暮らす変態。すでに数人の女を殺し、下腹部をめった刺しにした上で、全裸にして丹沢山中に埋めていた。麻美が罠にかかったころ一人の死体が発見され、神奈川県警が動き出した。その後付近から何人もの死体が出、これから使用するだろう予備の穴まで見つかった。
一方富田は麻美に結婚を申し込むのだが、麻美は友人から誘われたSNSに新規加入したことで「お友達」が増え、それが現実の恋愛につながっていきそうになる。
男が死者にSNSでなりすましたり、麻美のパスワードを推測してアクセスしたり、富田にフィッシングメールをしてクレカ情報を盗んだり、ランサムウェアで身代金を要求する手口が満載されたミステリーだった。発表から7年経った今でも「こういうことに気を付けないといけない」と教えてくれるサイバーセキュリティ教本としての価値は十分にありますね。