新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

殺人犯の息子と娘が死んだ

 2014年発表の本書は、イタリアの<87分署>との言われるマウリツィオ・デ・ジョバンニの<P分署シリーズ>第三作。分署立て直しで赴任してきたパルマ署長の指揮で、麻薬がらみで地に落ちたP分署の士気は回復しつつある。11月のナポリは凍てつくほど寒い日があるが、そんな朝アパート暮らしの若い兄妹が殺されたとの報が入る。

 

 科学者の兄はデスクで殴り殺され、モデルの妹はレイプされたような姿でベッドで死んでいた。署長指示で、腕利きのロヤコーロ警部が捜査の指揮を執ることになる。隣の部屋にホモのカップルが住んでいて、異変を聴いて通報したもの。彼らによると、兄と言い争っていた男がいたし、妹に言い寄っていた男もいた。また、兄妹の父親は殺人罪で服役していたが、1年前に出所しているらしい。

 

        

 

 もう一つの事件は、中学教師から持ち込まれたもの。教え子の少女が父親に性的暴行を受けているのではないかと疑われるのだが、学校では手が打てないのでとの相談だった。これには<ハルク>のあだ名で知られるロマーノ巡査長と、チャラ男のマルコ一ラ巡査が担当することに。各事件について、関係者のプロフィールを調べるのに、SNSが重宝されるのが現代的な捜査。

 

 立て直しを建前に集められた警官たちは、各分署のはみ出し者だった。今は立派な警官になっているのだが、各分署はそれを認めない。「クズはどこでもクズ」という視線に、パルマ署長は本部会合で闘い続ける。その個性的な警官たちが、本音をぶつけ合う捜査会議の模様は面白い。

 

 ニューヨークのイタリア系移民は、他の人たちより家庭的だという。本書もホームドラマ的要素が強いが<87分署もの>よりややドライ。民族的な理由より、世代的な変化があるのだと思う。美文調で「家へ帰ろう」「良い夜を」などとリフレインする章があるが、警官たちの「家」や「夜」には個々の悩みがある。

 

 なかなか好調なこのシリーズですが、慣れない(&似たような)イタリア人の名前には混乱させられます。まだ入手できていないデビュー作も探しますよ。