2013年発表の本書は、先月「寒波」を紹介したイタリア発の警察小説シリーズの第一作。作者のマウリツィオ・デ・ジョバンニは、ナポリ生まれで銀行員出身。このシリーズは、ナポリの下町に位置する架空の<ピッツオファルコーネ署:通称P分署>の刑事部屋を舞台にした大河ドラマで、連続TVドラマ化もされている。
イタリア第三の都市ナポリは、南イタリアの代表的な街であり観光地。移民も多く、貧困層と富豪との格差は著しい。P分署管内は、貧民、中間層、アッパーミドル、大富豪の居住区が混在する、イタリアの縮図のような地区だ。
この分署は、麻薬からみの不祥事で多くの刑事がパージされ、存続が危ぶまれた。しかし新しい署長のもとに、各署からの移籍組を受けて再生されることになった。メンバーはいずれも、公私にわたって悩みや問題を抱えた警官たちばかり。移籍組のロマーノは、

・マフィア内通の疑いがある警部
・警官ごっこをしているコネで入った若造
・銃に執着する、頭のネジの緩んだ女
・子持ちの大人しい主婦
・自殺を他殺と妄想し、幻の殺人犯を追う老いぼれ
・うわべだけ熱心な電気掃除機のセールスマンのような署長
とメンバーを値踏みする。そのロマーノも陰で<ハルク>とあだ名され、容疑者に暴行した罪で何度も出勤停止を喰らっている暴力警官だ。この7人を中心に物語は進むのだが、マクベインの<87分署シリーズ>同様、複数の事件が並行して描かれ、中には解決しないものもある。警官の家庭も事件の背景となった家族も、富豪の下働きをしている移民たちも、すべて息づいているリアルさは特筆もの。
新生P分署最初の事件は、大富豪の妻を持ちながら女遊びを繰り返す公証人の家庭を襲った悲劇。夫の出張中に妻が殴殺されたのだが、当然容疑は夫にかかり・・・。ミステリーとしても鮮やかな解決でした。このシリーズ、とても魅力がありますね。