フランスの著名な歴史人口学者エマニュエル・トッド博士のインタビュー記事は何度も紹介しているが、ロシアのウクライナ侵攻直後に出版された「第三次世界大戦はもう始まっている*1」の主張内容を、少し深堀して日本のジャーナリスト池上彰氏のインタビューの応えたのが本書(2023年発表)。
自ら「あくまで中立な学者」と言う博士は、侵攻したのはロシアだがさせたのは米国とNATOだと主張する。米国&NATOのウクライナ支援は、ウクライナに代理戦争を戦わせているものだと手厳しい。
プーチン体制のロシアは、乳幼児死亡率が米国より下がった安定した国。ただし、人口は減っている。人口の増えている米国への挑戦は、早い方がいいので今回の侵攻になった。米国の軍事力が弱まったのも、プーチンの背中を押した。製造業が空洞化した米国は、まともな兵器が作れないと見ている。
西側各国で製造業が頼りになるのは、ドイツと日本。だから米国は両国を手放したくない。ロシアの侵攻をきっかけに、米国はドイツとロシアの分断を図っている。もうひとつ不気味なのがポーランド。かなりの軍事大国になっていて、ウクライナ西部(もともとポーランド領)を狙っている。ロシアとウクライナの三分割をする可能性がある。
ロシアは制裁されても経済が好調、逆に西側諸国は経済も低迷しているし、国際的にも少数派になっている。もはや日本も米国に依っていてはいけない(*2)。博士が勧めるのは、
1)核武装
2)中立国宣言
3)子供を作る
の3点。軍事大国である中国・米国・ロシアらと距離を置き、核武装して自衛力を高め、人口を維持するために子供政策を推進せよとの意味だ。そのためには、これまでの経済合理性を追求する姿勢を改めるべしとある。
僕の仕事「Global & Digital」を真っ向否定するのがトッド先生です。今回も、御説は拝聴しておきます。
*2:ロシアではなく米国が崩壊する可能性が5%はあるという