新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

神を演じたダルジール警視

 1990年発表の本書は、以前「秘められた感情」や「四月の屍衣」を紹介した、レジナルド・ヒルの「ダルジール&パスコーもの」。「秘められた・・・」から20年近く経っていて、パスコーは主任警部に昇進している。妻のエリーとの間に子供も生まれて、私生活は安定してきた。一方ダルジール警視の方は、相変わらずのやもめ暮らし。酒もタバコも止められず「でぶっちょ警官」とチンピラに呼ばれるほど。本書の冒頭でも、呑み過ぎでバケツを抱えているシーンが出てくる。

 

 バケツを抱えながら向かいの家を見ると、裸の女性に2人の男が何やら言っている。何か凶器のようなものを一人が取り出したので、ダルジールは慌てて隣家に向かった。途中銃声がし、着いてみると女はベッドの上で頭を吹き飛ばされて死んでいた。男の一人はスウェインという建設業者、もう一人は彼の顧客でウォーターソンと名乗った。

 

 スウェインは死んだのは妻だといい、自分の銃で自殺を図った、止めようとしたが間に合わなかったと主張する。ウォーターソンも同意するのだが、現に発射したばかりの.357コルト・パイソンはスウェインの手の中にあった。

 

        

 

 ダルジールはスウェインを逮捕し、裁判にかけるのだが、陪審員はスウェインの主張を認め無罪の評決をしてしまう。諦めきれないダルジールは、トリンブル警察長から再びスウェインに手を掛けたらクビだと言われながらも彼の身辺を探る。彼の会社は、公共事業を多く請け負い、今も警察の建物の補修工事をしている。

 

 パスコーも、ダルジールの品の悪さに辟易しながらも捜査に協力する。するとスウェインの周辺には「事故」がよく起きて、何人もの人が死んだり行方不明になっていることがわかる。警察小説らしく、このメインの事件のほかにも、

 

・自殺をほのめかしてダルジール宛手紙を送ってくる「黒婦人」

・地元で行われる聖史劇の準備、ダルジールはここで神の役を演じる

 

 が並行して描かれる。「黒婦人」はただ自殺をほのめかすだけではなく、隠れた事件を暴くヒントをくれたりする。聖史劇には、なんとスウェインも出演する。

 

 このシリーズの面白みは、破天荒なダルジールの言動と、それに翻弄されながらフォローするパスコーのコンビネーションです。デビューから20年以上経っても、その関係は変わらないようです。