新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ヴィクトリア荘の下宿人<スミス氏>

 1939年発表の本書は、ベルギー生まれで記者出身の作家スタニラス=アンドレ・ステーマンの本格ミステリー。1931年発表の「六死人」は、クリスティの「そして誰もいなくなった」に先駆ける作品と言われる。本書も、フェアなのかどうかの議論を巻き起こしたと解説にある。

 

 霧深い年末のロンドンで、砂袋で通りががった人を殴り殺すという連続殺人事件が発生した。すでに7人が殺され、現場には<スミス氏>の署名が残されていた。捜査に当たるスコットランドヤードのエースであるストリックランド警視のもとに「<スミス氏>の犯行を目撃、尾行したところラッセル広場21番地のヴィクトリア荘に入った」との情報がもたらされる。

 

        

 

  しかしヴィクトリア荘は下宿屋で、夫婦者を含む7世帯が入居していた。警視は目立たぬように監視をつけ、新しく入居することになっていたフランス人をスパイに仕立てて送り込むが、<スミス氏>は彼を刺殺し自らメディアに電話して犯行を告げた。

 

 ことここに至っては警視もヴィクトリア荘に乗り込まざるを得ず、下宿人たちを尋問するのだが犯行時期のアリバイなど、覚えている方が少ない。家宅捜索でも決め手は出ず、警視は容疑者たちと会話を続けて手がかりをつかもうとする。

 

 ダイイングメッセージ(フランス語の!)から、一人の容疑者を勾留するのだが、ようやく彼が自白したと思ったら、新たな犠牲者が出る。次の容疑者を捕まえても、また新たな殺人が・・・。そして大団円の前の10ページほどのコントラクト・ブリッジの意味は・・・。

 

 2度にわたる<読者への挑戦>が行われるなど、本格ミステリーの基本をなぞりながら、どこかパロディのような雰囲気もある不思議な作品でした。WWⅡ直前のベルギー発のミステリー、見つけて嬉しかったです。