1974年発表の本書は、匿名作家(*1)サイモン・クインのスパイスリラー。ヴァチカンの聖務省が持つ異端審問所の審問官(Inquisitor)フランク・キリーのシリーズだ。原作は6冊出ているのだが、なぜか第一作、第三作が翻訳できなかった。そこで第二作の本書が、創元社のシリーズとしては最初のものになる。
カトリックの総本山ヴァチカンの組織ゆえ、任務にあたっても人を殺めてはいけない枷がはめられているのが異端審問官。所長のチェルラはイタリア人だが、WWⅡではナチと戦うパルチザンだった。部下のキリーは米国人で、CIAを辞めて審問官になった。凄腕スパイだが、もともと殺しは忌み嫌っていた男だ。

パルチザンだったチェルラの組織を裏切り、彼以外の同志を殺させた人物が誰かを、チェルラはずっと追っていた。あるきっかけで彼は手がかりをつかみ、裏切り者ジャーン・サラン神父が今はフランス情報局<アクション>の局長に就いていることを知る。
一方ジャーンもチェルラの動きを察知し、殺し屋を送ってきた。チェルラとキリーはこれを撃退したが、<アクション>は米国CIAも巻き込んで2人を執拗に狙う。<アクション>の殺し屋を殺してしまった2人は、15日間独房でパンと水だけの生活を送り、祈りを捧げなくてはいけない。勤めを終えたキリーは反撃のためパリに潜入するのだが・・・。
「007の亜流」であって、女スパイとのからみやカーアクションなどは定番通り。ただ「殺さないスパイ」という矜持があって、その点のサスペンスはなかなかのもの。そして、キリーのチームがサランに見せる「地獄」は、「Mission Impossible」の手法を思わせる。辻堂のBookoffで2冊だけ見つけたので、息抜き用に買いました。明日は第四作を紹介します。
*1:ソ連を舞台にした警察小説で有名な作家だとあるが、想像がつかない。