1990年発表の本書は、アル中の無免許探偵「マット・スカダーもの」。作者のローレンス・ブロックはシリアスなハードボイルドを書くときは、この探偵を使う。1ダースほどあるシリーズだが、中期の作品である本書は評価が高く、少なくともベスト3には入る傑作だろう。
不幸な事故で酒浸りになり、警察を追われ、妻子にも去られたマットだが、元は優秀な刑事だった。高級娼婦のエレインを情報屋に使っていた刑事のマットは、エレインとその友人のコニーに暴力を振るう男モットリーから助けて欲しいと頼まれた。痩身だが全身鋼のような筋肉をしていて、強力な指でツボを圧し相手を動けなくする。

良い女と見れば暴力を振るい、アブノーマルにレイプし、何度もやって来る。格闘ではマットも歯が立たなかったのだが、モットリーの弱点である顎を殴打して辛うじて捕まえた。マットは景観への暴行に加え、銃の発砲をしたとの罪を着せ、2人の娼婦に証言させてモットリーを刑務所送りにした。
それから12年、マットはエレインからモットリーが出所したことを知らされる。しかも娼婦から足を洗い、家庭を持っていたコニーを襲って一家5人を惨殺したという。モットリーの刑務所仲間によると、刑務所内でも2人ほど殺し(証拠不十分)ていて、「マット・スカダーは許せない。女たちともども殺してやる」と言っていたらしい。
エレインを守ろうとするマットだが、AA(アル中の自主更生会)で時々一緒になるトニが殺された。マットに近い女は、みんなターゲットになってしまうのだ。マットはこれ以上犠牲者を出さないためにとモットリーを追うのだが、逆に叩きのめされてしまう。
娼婦やバーテン、アル中患者の会員など、大都会の陰に暮らす人たちを哀愁たっぷりの筆で描き出すのが作者の特徴。それが最大限に活かされたのが本書。悩みを抱えたマットの生き様は、まさに現代のハードボイルドですね。