新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

グルメ記者の2つのハンディ

 本書はこれまで3作を紹介した、リリアン・J・ブラウンの「シャム猫ココシリーズ」の第四作。1986年に発表されたもので、書き下ろされてから出版までに20年近くかかったのには訳がある。1966年に始まったこのシリーズ、毎年1作のペースで発表され、本書も1969年に出版されるはずだった。しかし猫がそれほど受けなかった時代ゆえ、出版社は3作で打ち切りを決め、本書は原稿は完成していたのに世に出なかった。

 

 その後作者が再婚した俳優が原稿を見て「これは売れる」とプロモーションし他の出版社から出ることになったと解説にある。この20年間に、米国でも猫をペットにする人・猫をこよなく愛する人が増えて来て、ミステリーというより「猫好きの愛読書」としての地位を確保したと思われる。

 

 さて「さすらいの新聞記者」のような<ココ>の飼い主クィラランは、今回はグルメ記者を命じられる。社費で豪華なレストランを取材(当然食べるよね~)して歩けるという役得があるのだが、クィラランにはひとつのハンディキャップがあった。それは50歳代が見えて来て体重が増え、担当医からダイエットを命じられていること。せっかくのごちそうを前に、十分に食べられないのだ。

 

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 さらに体重計を買って計ってみると「3ポンドも増えている!」と驚く。実は<ココ>がこっそり体重計に足を踏ん張って、目盛りを操作していたのだが。今回はレストランのオーナーなどグルメ関係者ばかりが住む<マウス・ハウス>に、クィラランたちは引っ越した。そこで彼は若いころの恋人ジョイと再会する。彼女は今は陶芸家で、やはり陶芸家の夫ダンと、<マウス・ハウス>を工房兼住居として暮らしていた。

 

 <マウス・ハウス>のいいところは、豪華な食事が出ること。仕事に役立つ面と、ダイエットの妨げになる面で、クィラランは悩む。そんなある日、ジョイが相談に来て、

 

・いい釉薬を開発したが、夫には秘密にしている。

。夫と別れて出直すのでカネを貸してほしい。

 

 という。たまたま社内懸賞でもらったカネがあったので渡すと、翌日ジョイは失踪してしまった。この事件を、例によって<ココ>が暴き出し、最後は犯人を罠にかけて捉えてしまう大活躍。

 

 それはいいのですが、クィラランにはグルメ記者になるにはもうひとつハンディがありました。井之頭五郎さんのように、お酒を呑まないのです。酒抜きのグルメはどうにも締まりませんよ。