1972年発表の本書は、英国流の本格ミステリー作家D・M・ディヴァイン後期の作品。これまで「跡形もなく沈む」など、田舎町を舞台にした落ち着いた「Who done it?」を紹介しているが、本書もそういった佳作。
チャルフォードの町で、13歳の少女ジャニスが殺された。同級生たちと7月の夜の海でたっぷり泳いだ後、ひとりだけ歩いて帰ったのだ。自転車で帰った3人によると、近道としてゴルフ場を横切ろうとしたらしい。翌日、9番ホールで衣服と全裸絞殺死体が見つかった。
若くてハンサムだがだらしのない性格の医師テリーが、近くで目撃されていた。夕食後3時間以上姿を消していたことから、容疑は彼にかかる。夏休みを恋人でジャニスも担当していた教師のシーラと過ごした後、町に帰ってきた彼は崖から転落して死んでしまう。自殺として被疑者死亡で事件は幕・・・とはいかなかった。次の犠牲者が出たからだ。

物語は、テリーが勤務していた診療所のオーナー医師の娘マンディ、テリーの弟で意思として診療所に勤め始めるマーク、マンディの腹違いの妹で発達障害の13歳シーリアらの独白で綴られていく。マンディの母親は早くに亡くなり、彼女が7歳の時に父親が再婚、産まれたのがシーリアだ。母親グウェンはシーリアは普通の子だと頑なに主張し、夫婦間には寒風が吹いている。現実には体は人一倍大きいのに、もう2年も落第している状況だ。マンディは家族に背を向けて、父親の診療所の事務を手伝うことに専念している。
そんなマンディを可愛く思うマークだが、一方でテリーを亡くしたシーラの猛アタックを受けて婚約までしてしまう。その間にも、ジャニスの同級生がまた一人殺されて・・・。
独白の中に微妙な手掛かりが隠されているのだが、作者の練達の筆はそれを気付かせません。特に発達障害の13歳シーリアの独白は、並みの作家には書けなかったでしょう。作者の腕前は確かです。