新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アイリッシュの第一短編集

 本書は以前「幻の女」「暁の死線」などを紹介したウィリアム・アイリッシュ(別名コーネル・ウールリッチ)の短編集。1940年代を代表するサスペンス作家で、犯罪小説から変革ミステリーまで、やや暗めのトーンで幅広いジャンルの小説を遺した。20冊ほどの長編のほか1ダースの短編集も発表しているが、短編集はあまり日本では紹介されていない。本書がその第一のもので、50ページ以下の短編8編が収められている。

 

 表題作「晩餐後の物語」は、エレベータの事故で息子を亡くした男が、関係者を晩餐に招待し息子の死に責任がある者をあぶりだそうとする話。食事は美味しかったのだが責任ある者の皿には毒を入れたと言われ、席上の人々はパニックになる。身に覚えのある者が名乗り出てくれれば「解毒剤」を飲ませてやると、主人は言うのだが・・・。

 

        

 

 「階下で待ってって」はエスピオナージュ仕立て。小さな事務所に勤める彼女と待ち合わせて食事に行こうとした僕。彼女は届け物をするとして、ビルの4階に上がっていって消息を絶った。ビルの目的の部屋は空き部屋、管理人も彼女を知らないし目的の相手も知らないという。事務所に戻ると経営者が、そんな女は知らないという。パニックになった僕は警察に駆け込むのだが・・・。

 

 「射的の名手」は小切手詐欺を働こうとした男が、相手の女優に見とがめられて犯罪の手助けをすることに。ある男の腕を撃って軽い怪我をさせてほしいという話だったが、撃たれた男は死んでしまった。逃げ出した男を助けてくれたのは、ネルソンという探偵。彼は別の誰かが頭を狙って撃ったというのだが、まるきり証拠がない。

 

 大都会の中の孤独、忍び寄る死の影、絶望と焦燥にさいなまれる犠牲者など、バリエーション豊富なサスペンスが作者の持ち味です。長編と違ってテーマと雰囲気がストレートに伝わり、どちらが好みかは人によって違うでしょう。僕は・・・そうですね、短めの長編あたりが一番ぴったりきます。