本書は、2009年に出版された同題名の本を、序章・終章等を加筆して2023年に再版したもの。筆者の福田充教授(危機管理学)は、コロンビア大学「ザルツマン戦争と平和研究所」に客員研究員として赴任していた時代に、テロリズム研究をしていて本書の原稿を書いた。
筆者は、日本でも安倍元首相暗殺事件が起き「テロリズムの時代に入ったのでは」との思いで、「政治と暴力*1」を発表した。その後現職総理である岸田首相も襲われ、その思いを強くして本書の新版を出すことにしたとある。
基本的な主張は「メディアとテロリズムはもちつもたれつの関係」であるが、メディア批判ではなくメディアと協力してより建設的な処方箋を提供したいというものだ。

テロの目的は市民の恐怖を植え付けることだが、メディアの助けがなくてはそれを周知できない。一方メディアは視聴率や部数を稼ぐために、テロを報道し続ける。例として挙げられたのが、オウム真理教事件。麻原らはTV番組「朝まで生テレビ」や「ビートたけしのTVタックル」などに堂々と出演し、タレント扱いされていた。
紹介しているテロ案件は、9・11、オウム、ペルー大使公邸占拠、ミュンヘン五輪、新疆ウイグル独立勢力など多岐にわたる。人質犯の指揮官の言葉「撃つなアブドゥル、まだゴールデンタイムじゃない」などは、その実態を表わしている。特にTVは情報拡散力が強く、メディア研究者は「TVはイベントへの接し方を平等にする」と言っている。
ではメディアは「共犯」にならないためにはどうすればいいか?筆者は日本メディアに3点注文している。
・テロリズムに関して、政府とメディアの対話ルートの確立
筆者を指導したコロンビア大のジャーヴィス教授は「自由・人権・民主主義を護るために、リベラルな安全保障・テロ対策・インテリジェンスが必要」と仰ったとあります。そう、リベラルなメディアもまた、必要ということですね。