新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ロバート・ラドラムの遺作シリーズ

 トム・クランシーから少し遅れて、軍事・スパイスリラー系ですごいなと思い、何冊か読んだのがロバート・ラドラム。最近Book-offでも見かけないのだが、たまたま本書(2000年発表)が手に入った。作者もクランシーに倣い、共著者を変えることで作風の違ったシリーズを産み出した。作者は2001年に急逝したので、このシリーズ「Covert-One」が遺作となった。作者はいつも大仕掛けが得意で、ワイルドなストーリー展開が魅力的だった。このシリーズでも、その特徴は活かされている。

 

 本書の仕掛けは「未知の出血熱のパンデミック」、1990年ころにイラクに駐留した軍人やその親族が3人、未知の出血熱で死亡した。ロンドンに出張していた陸軍伝染病研究所のスミス中佐は、急遽本国に呼び戻される。現地で診療にあたっていたスミスの同僚で婚約者のソフィア医師は、病原菌の手がかりが学生時代にペルーで出会った事件と人物にあると推測する。その男トレモント博士は、今は大手製薬企業<ブランチャード>のCEO、しかし彼には裏の顔もあった。

 

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 実はトレモントはかつてペルーで見つけた出血熱ウイルスを強化、培養し、世界にパンデミックを引き起こそうとしていた。手先となっているアラブ人テロリストは、ソフィアを誘拐しウイルスを注射して暗殺した。婚約者の死をみとったスミスは、元FBIの友人ビルの忠告も聞かずに捜査に乗り出す。政府や軍の上層部にもネットを張っているトレモントは、スミスを危険分子とみなして指名手配させることに成功する。科学者ではあるが軍人としても優秀なスミスは、様々な人の手を借りながら逃亡し続け、トレモントが湾岸戦争後のイラクで人体実験を行っていたことをつかむ。

 

 この協力者たちというのが、みんな魅力的。SISを引退しながら非合法作戦を請け負っているハウエル少佐、アスペルガー症候群を患って非力だが天才的なひらめきを見せるマーティ、ソフィアの妹でCIA工作員であるランディ。トレモント一派との激戦にも彼らは生き残ったので、次からの作品にも登場するはず。

 

 ちなみに本書では「Covert-One」の正体は明かされないままです。要は続編も探せということですね。