1999年発表の本書は、この3ヵ月デビュー作から1冊/月読み進んできた、ローラ・リップマンの「テス・モナハンもの」の第四作。貧しくなってしまい格差もひどいボルチモアに住む人たちを中心に描いた、質の高い社会派ミステリーである。ただ本書ではテスはテキサスに出張して、スペイン語が主流の街サン・アントニオで事件を追うことになる。
私立探偵としてのテスは、前作「スタンド・アローン」の事件を解決したことで有名になり、依頼も十分やってくるようになった。しかし第二作「チャーム・シティ」で別れた6歳年下の恋人クロウが、テキサスで行方不明になっていたことが分かる。クロウの両親から探してくれと依頼を受けたテスは、愛車のトヨタカローラに愛犬エスケイを乗せてテキサスに向かう(正直想像できない!)。

クロウはサン・アントニオでバンドをやっていて、ボーカル担当の地元娘エミーと仲良くなっていたらしい。クロウが借りていた部屋を訪ねると、そこには射殺された男の死体があった。男は20年前に幼児誘拐で有罪になった2人組の一人、2人揃って出所したばかりだった。
10月末とはいえボルチモアなら晩夏に近い気候の中、テスはようやくクロウを見つけるが、クロウの相棒エミーには驚かされることばかり。食肉大手企業の経営者を親に持つ彼女だが、2歳の時に母親ら3人が惨殺された現場に取り残されていたという過去を持ち、精神が不安定だ。
ヒスパニックが暮らす貧民街、安いメキシコ料理店、観光施設としてのアラモ砦などを横目に、テスは殺人容疑を掛けられてしまったクロウを助けるべく現地の弁護士トレホやその恋人クリスチナらの助けを借りて奮闘する。
この街でも分断が多いが、特徴的なのは食肉関係事業者と菜食主義者の軋轢。エミーの実家<スターク食品>は多くの牛を殺しているとのデモに襲われる。舞台を変えた第四作、いつも通りの品質でした。しかしやっぱりテスにはボルチモアが似合うようで。