これまで幾多のアリバイ崩しもの「伸介&美保シリーズ」を紹介してきた津村秀介は、かつては<週刊新潮>の記者/ルポライター。同誌で「黒い報告書」の連載を担当していたという。<週刊広場>で「夜の事件レポート」担当の浦上伸介と作者とは、まさに表裏一体の関係にある。
本書は作者が、リアルな作品として<週刊小説>に1988~1992年に発表したものを、8編収めた短篇集。8編中、殺人事件は表題作「湖畔の殺人」など2件だけ。いずれも計画性の乏しいもので、緻密なアリバイ工作などカケラもない。他の犯罪は、婦女暴行、恐喝、詐欺、強盗といった「ありふれた」ものだ。
比較的大きな地方都市(おなじみ横浜や岡山、名古屋などが出てくる)を舞台に、田舎から出てきた若い男女が、被害に遭ったり、グレたり、陥穽に落ちていく様を描いたものばかりだ。

妻を含む女に裏切られてばかりいた中年男が、復讐の念に燃えて若い女たちを襲うなど、色がらみの事件も目立つ。貧相で酒臭い中年男が、可憐な女子高生に襲い掛かるシーンがリアルだ。中には、レズビアンやSM狂などが登場する作品もある。更生不能な犯罪者が出て来て、「今回は3日で刑務所に逆戻りか」とうそぶいたりする。
色欲の他にあるのは金銭欲。貧しい環境で育ち、地方都市に出てきたものの身を立てることが出来ず、かといってヤクザにも成り切れない半端なワルが、カネに目がくらんで破滅してゆく。ステレオタイプかもしれないが、社会のダークサイドにはよくある犯罪であり犯罪者だ。
作者の表看板「伸介&美保」シリーズでも、事件の背景はリアリティのあるもの。難点は殺人方法があまりに簡単(ナイフ1本で即死・・・が多い)なのだが、乗るべき列車を待たせておいてじっくり殺しの時間が取れないので仕方ないかもしれない。
作者の原点、それなりに味わうことが出来ましたね。